テリー・ギリアム監督の未来世紀ブラジルを鑑賞したのでつらつらと
解説は映画.comから引用
アリイ・バロッソ作曲の“ブラジル”がバックに流れる近未来ブラック・コメディ。製作はアーノン・ミルチャン。共同製作はパトリック・カサヴェッティ。監督は「バンデットQ」のテリー・ギリアム。脚本はテリー・ギリアム、トム・ストッパード、チャールズ・マッケオンの共同。撮影はロジャー・プラット、音楽はマイケル・ケイメン、特殊効果はジョージ・ギブスが担当。出演はジョナサン・プライス、キム・グライストほか。ギリアムが製作会社と編集方針で対立。結果複数のバージョンが存在することとなった。日本で上映されたのは142分のヨーロッパ版。
Brazil(1985) Trailer - YouTube
点数 77/100
未来世紀ブラジルっていう名前からしてわりと好きなんですけれども。
舞台が20世紀のどこかの国というわけで凄くサイバーパンクでディストピアな世界となっています。情報統制された世界、マイノリティ・リポート感もちょこっとだけあるかな。あんなに未来未来してないけれど。
そんなにサイバーパンクっぽくはないですが、無類のサイバーパンク好きな僕としてはこの世界を描いているってだけで凄くたまらんわけですよね。朝起きると自動的に朝食が作られたり、クローゼットからスーツが出てきたり。バック・トゥ・ザ・フューチャーでも同じような場面が有りましたが、ピタゴラ装置を連想させるこの便利さを追求してしまったがための無駄無駄感がすごくたまらんです。
公開年が85年ということもあり、PCってものが殆ど無い状態でのあのタイプライターというかなんというか。小さな画面を虫眼鏡ボードで拡大して画面として表示させてるのとか凄く時代を感じさせます。
情報統制された世界で未来なんだろうけどどこか古臭い。いたるところにあるパイプやダクトが凄く印象的。そのへんはwikiにも書いてありましたが、すごく物語の重要な鍵を握ってる物だと感じます。
何度見ても印象的なのが夢の部分とエンディング
夢のシーンは唐突に入ってきて、主人公サム(ジョナサン・プライス)は夢の中で翼を付けたヒーローです。そこに囚われの美女が現れ恋をします。それが現実世界でたまたま出会うジル(キム・グライスト)という女性でした。夢の中で見た女性に恋をするっていう話はわりとありがちだとは思いますが、そこにタトルとバトルを間違えたことを知っているため僕が守らなければならないんだっていう要素を加えたところは凄くいいと思います。ただ、出会った当初の邪険に扱う感じから急に恋人感だしてくるあたりはいただけないかなあと。それでも自分自身の胸にリボンを巻いて、クリスマスプレゼントのところは何度見てもキュンキュンしちゃいますね。
夢の中では長髪の彼女が現実では短髪なため夢の人物と一致しているのかが凄く薄いんですが、ベッドでかつらを被ったところでの夢で出会った女性と本当に再開したと感じさせるのはすごくいいですね。
もう一つ夢の中で印象的なのはサムライ。wikipediaにも
ストーリー中盤、主人公サムの前に、甲冑を着けた巨大な「サムライ」が立ちはだかる。サムがサムライを倒して、甲冑を外すとその顔はサム自身の顔であった。実はこれはジョークであり、その心は「Sam,You Are I(サム、お前は俺だ)」を短く発音すると「サムライ」になることからきている。
と書いてありますが、あの不気味さ。アメリカ映画に出てくるモンスター的な甲冑をつけたサムライってすごく不気味。パッと見た感じはストリートファイターシリーズでお馴染みのソドムを思い出しました。ファイナルファイトのボスでもいいんですが。そのサムライとの戦いで凄く巨大な的と戦っているように見せるための工夫がいろいろ凝られていて、サムライの巨大な影が背後の壁に写った状態でサムライと戦っているように見せるのは直接サムライを映してないのにも関わらず、あそこまで迫力出るのはいいなあって思いました。あそこにでてくるゾンビのような赤子のお面を被った奴らもすげー気持ち悪い。
そして唐突なラストシーン。いろんなことが急に起こりすぎていて、初見では置いて行かれそうになりました。だって、いきなりデ・ニーロ演ずるタトルが紙でおおわれていきなり消えてしまうのとかアイエエエエ! ニンジャ!? ニンジャナンデ!?って叫びたくなるような唐突さだし、場面同士のつながりが無いようにしか思えなくて、あーあ最後こんなんになっちゃったか。ってガックシしていたところにあの2人の顔。そしてブラジルを放心状態のなか口ずさむサム。そして引きの画でスタッフロールとか鳥肌モンです。いきなり妄想に逃げちゃうとかダンサー・イン・ザ・ダークかよ。
もともとモンティ・パイソンのメンバーであるテリー・ギリアムならではの、小さな笑いが各所に散りばめられているのもすごく好きでした。
序盤からずっと出てくる、美容整形失敗のため合併症を患っているアルマ夫人がだんだん包帯だらけになっていきながらも治ると信じているところとか、お母さんの美容整形のシーンで顔の皮をおもいっきり引き伸ばしてそのあとラップでぐるぐる巻きにするところとか。レストランでのやりとりだったり、情報局での机の駆け引きや、局長はいつも歩きまわっているところ。笑わせておきながらも、情報統制の世の中だからこそのギャグだったりと、皮肉要素たっぷりなところもいいですね。カサブランカの話題のサムの場面とかすごく好き。ポチョムキンオマージュはデ・パルマのアンタッチャブルのが完成度高かったなー
ただ、中盤で自分をつけていた人が誰だったか分からなかったり、前述のとおり、ジルとの関係が薄かったり、タトルとの掛け合いも重要ではあるものの取ってつけたような感じが否めなかったり。見ていて退屈ではないし、わかりやすいストーリーではあるものの物足りないと感じてしまうのはあったかな。そんなものエンディングで吹き飛ばされるんですが。
題名の由来ともなっている印象的な曲「ブラジル」は見たあとなかなか頭からはなれないですね。
そんなこんなで未来検索ブラジルじゃなくて未来世紀ブラジルお勧めです。
ではでは